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建築家の仕事は多岐にわたります。法律の検討、構造の設計、設備の設計、材料の選択、ディテールの決定などです。専門家ではない人が住宅の設計をしようというとき、その全てを手がける必要はありません。 自宅の設計を自分でやろうという人のほとんどは、自分で考えた通りの形を実現したいと思っているのではないでしょうか。形態、素材、色彩に関してはプロでなくても十分に設計することが可能です。 具体的に言いますと、形にかかわる図面は基本的には「平面図」「立面図」「展開図」だけなのです。この3種類の図面を画くだけなら少しの努力で画けるようになるでしょう。しかし、音楽で音痴な人がいたり、方向音痴の人がいるように、向き不向きもあることを最初に断っておきます。すべての人がちょっとした努力で、と言うわけには行きません。 ここではその形態にかかわる設計を自分でするためのノウハウを解説したいと思います。 基礎を含めた構造、役所に対する確認申請業務、細部のデザイン、見積書のチェックなどは専門家の力を借りるとよいでしょう。 それでも全てを自分でやりたいという方がいらっしゃったら、お手伝いさせていただきます。お気軽にご相談下さい。
実際に設計に入る前に周辺の法律を調べる必要があります。 いくら良い計画を立てても建てられない設計をしてしまったらなんの意味もありません。法律や条令による制約を頭に入れてから設計作業に入ってください。 法律には建築基準法、都市計画法、消防法、民法などがありますが、設計内容に影響を与える可能性があるのは建築基準法だけです。他の法律は細部の調整で解決する事が可能です。 ここでは建築基準法を中心に説明させていただきます。 役所に電話する 以下の情報は役所に電話する事で得ることができます。 窓口は役所によって違い、建築課、建築指導課、都市計画課などになりますが、役所の代表番号に電話して『用途地域他について知りたいのですけど』と言えばつないでくれます。 住所を告げると以下の情報を早口で述べてくれます。 市街化区域 日本の土地は市街化区域と市街化調整区域に分かれています。 市街化調整区域には、その土地で農林業を営んでいる人以外住宅を建てることが出来ません。 用途地域 地域を設定しその地域内に建てられる種類の建物と建てられない種類の建物が定められています。 住宅の場合は工業専用地域以外には建てられますからさほど気にする事はありません。 建蔽(ペイ)率 敷地の何%まで使うことができるかという決まりで、20%から80%まで様々な値で設定されています。 建蔽率は敷地面積に対する建築面積の比率です。 建築面積とは敷地を覆う建物の面積で壁の中心で計ります。 例えば1階2階とも50uの総2階建で合計100uの建物の建築面積は50uです。床の面積の合計は100uですが敷地の上を建物で覆う面積は50uだからです。1階が2階より大きな建物の建築面積は一般に1階の床面積になります。2階が1階よりせり出している場合、そのせり出した部分も建築面積に含まれます。 いずれにせよこの建築面積を敷地面積に対し、定められた比率(建蔽率)以下に抑えなくてはなりません。 容積率 容積率は敷地面積に対する床面積の比率です。床面積も壁の中心で計ります。床は壁の内側ですからバルコニーなどは含みません。 斜線制限 道路斜線、隣地斜線、北側斜線の3種類があります。 住宅など比較的低い建物で問題になるとしたら、狭い道路に面した敷地の道路斜線と、最も厳しい規制値をかけられた北側斜線くらいでしょう。斜線の決め方は多少煩雑になります。詳しい話は役所で聞いてください。 ただ、北側、あるいは道路に面している敷地境界線から2m離して建てることが出来ればまず問題になることはありません。 その他の地域 その他にも防火地域や文教地区、風致地区などの網がかかった敷地もありますが、住宅の建設でそれらが致命的な問題になることは絶対にありません。
イメージを固める 設計は実際に図面を書く以前に、完成したイメージをどこまではっきりと持つことができるかで決まります。 良い設計ができるかどうかだけではなく、それを明確にする事が設計作業の行程の半分だという意識を持ってください。 自分の日常生活や趣味、好みなどを一つ一つ思い起こしてみたり、イメージ探しに住宅街を歩いたり、住宅雑誌をながめてみたりするのもよいでしょう。 敷地で一人、長時間過ごすと自然にイメージが浮かんできます。だまされたと思ってやってみてください。最低でも1時間、何も持たず身体一つで座ってみたり歩き回ってみたりするのです。 いずれにせよイメージが不明瞭だと設計作業の過程でどんどん形が変化してしまい、結局無個性なものになってしまいがちです。設計作業中に浮かぶアイデアはどちらかというと偶然生まれたアイデアで、その時点では良いと思ったとしてもパワーが足りません。 設計作業前のイメージ作りは時間的にもどのくらいの日数が必要か誰にもわかりません。3日かもしれないし、1年かもしれないのです。納得するまでイメージを創り上げてください。 図面を画く 一通り法律チェックとイメージ作りが終わったら、それを頭に入れた上でいよいよ図面の作成に入ります。 図面の画き方にルールはありません。大工さんを始め作る人に伝われば良いのです。極端な言い方をすれば文章でもよいということになります。 私は廃墟のようになってしまったクラブハウスをオートバイ専用のホテルに改装する工事にあたり、平面図一枚とA4の文章十数枚で設計をしたことがあります。 しかし、出来上がりの姿をながめながら図面を書くと言う意味ではやはり、縮尺を決め、正確に画いていくのがよいでしょう。もちろんその図面にはどんどん文章も入れてください。何度も言いますが形式よりどのような方法を使っても意図を作る人に伝える事が大切なのです。 道具 今はほとんどの設計事務所、建設会社でキャド(パソコンで図面を画くソフト)を利用しています。JWキャドなどネット上で無料で配られているキャドもあります。このキャドは日本のプロの間では最も普及しているキャドでもあります。扱いもそれほど難しくなく、私の場合は初めて手にして半日後にはそれなりの図面を画いていました。 使い方は解説書が出ていますのでそれを参考にしてください。解説書にはキャドのソフトも付いてきます。 しかし、慣れれば問題はありませんが、キャドを扱う事に労力を費やし、肝心の設計がおろそかになる恐れもあります。鉛筆と定規なら誰でも扱ったことがあり、自由に思ったままを表現する事ができるでしょう。 手画きの道具としてはやはりT定規と三角定規が必要になります。T定規を扱うのが面倒だという人は普通の定規一枚と方眼紙を使えば良いと思います。紙はやはりトレシングペーパーがよいです。トレシングペーパーは青図のコピーを取るためにどうしても必要だったのですが、それだけではなく画き終えた図面の上にもう一枚重ねて画くことができるという意味でも便利です。方眼紙のトレシングペーパーもあります。 鉛筆はシャープペンシルが良いでしょう。芯の太さが0.3mmの製図用のシャープペンシルもあります。芯はあまり固くない、2HかH程度が使いやすいです。 平面図を画く−単位 プロ以外の人に平面図を画かせたら日本人は間違いなく世界一です。別に日本人が特別な能力を持っているという意味ではなく、畳と言う単位を持っているからです。10uとか100uと言われてもピンときませんが、6畳とか10畳、50畳と言われればだいたいどのくらいの広さの部屋か日本人なら誰でも直感的に分かります。 そういう理由で平面図は畳の大きさをもとにして画くのがいいでしょう。方眼紙を使うなら二枡(1cm×2cm)を畳一枚にするわけです。実際の1間は1,818mmですから、変な縮尺(1:91)になってしまいますが気にする事はありません。 もし、木造ではなく鉄筋コンクリートの家を建てたいと思っているのだったら、同じく畳のつもりで普通に設計し、一枡を1mにしてください。コンクリートは壁が厚いので1間を1,818mmにしますと狭苦しい家になってしまいます。1mだと実は少し広すぎるのですが、鉄筋コンクリート造りの家はそもそもちょっと贅沢な家ですからそれでちょうど良いのではないかと思います。 2×4構造は単位がインチとフィートですが、1フィートが304.8mmで、303mmの尺とほとんど変わりません。日本の在来工法と同じ感覚で畳サイズを規準にして設計してください。 平面図を画く−プランニング 申し訳ありません。少しずつ書き足して行きますが、この文章は現状ではまだ未完成です。今すぐにでも自分で設計をしたいという方は私が直接指導いたします。下の 指導希望 をクリックし、知りたいことについて質問してください。
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