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先日、半年振りに信州信濃大町の山あいにある『森の暮らしの里』を訪れました。 踏込むのもためらわれる深い雪の木立ちの中に、去年の夏、子どもたちと泣いたり笑ったり、怒ったり喧嘩したりしながら創り上げた3棟の家の跡地がうずもれていました。 雪の上に、子どもたち一人一人の顔が浮かびます。お別れの日、大きな目にいっぱい涙をためていた子どもたちの顔です。 夏のその期間、天国のような時間が過ぎ去って行きます。 子供の声で目覚め、蝉の声の中家作りに励み、美味しい食事を食べ、みんなで列になって温泉に行きます。ある時は沢の水をみんなで協力して汲み、火をおこして五右衛門風呂に入ります。夜はお酒を飲みながら、ゆったりと過ぎ行く時間を子どもたちと過ごします。森の闇の中に何度も何度も笑い声がはじけます。そしてみんなで作った家で、子供と子供の間にはさまれて眠りにつくのです。
子どもたちに決まりごとはほとんどありません。 起きる時間も寝る時間も自由です。だからほとんどの子は夜、大人がお酒を飲んでいる脇で大人の会話に参加します。私も子供のころ、親戚が集まってお酒を飲んでいる座に混じり、話に加わるのが大好きでした。ずっと昔から日本の子どもたちはそうだったのかもしれません。 そして、話しつかれて眠くなった子から順番に寝ます。それでも朝寝坊して起きれない子は一人もいませんでした。どうして早起きするの? と、ある子に聞いてみたら、こんなに楽しいのに寝ているのはもったいない、と言いました。 山の斜面を転がって降りるのも、焚き火をするのも、木登りするのも、作った家の屋根に上るのも(なぜか屋根の上は子供達のお気に入りの場所です)全部自由です。喧嘩も仲直りも自由なのです。でもあんまりわがままをすると仲間に嫌われてしまいます。子どもたちはすぐにそれも理解します。
大人には大きな決まりごとがあります。 子供達がやろうとしていることに口を出さない。一言で言うとこれです。言うのは簡単ですが、実際にこれを貫くには大変な体力が必要となります。 まず、家作りは大人にとっても十分に楽しく、特に手伝いの建築学科の学生などはつい自分の意見を入れてみたくなってしまうのです。また、子供達の作業は体力の差もあり遅々として進みません。それを横で我慢強くサポートするのに疲れ果て、つい手を出してしまいたくなったりするのです。 しかし、それは建設部リーダーの私が絶対に許しません。ただし、子供のほうから意見を求めてきたり、手伝ってくれと言ってきた時は別です。子供が主役であり、施主でもあるからです。 また、口を出すことはしませんが、いつも必ず子供の横にいて、子供のやることを一つ残らず見ています。見ること、それが最も重要な大人達への決まりごとです。いつも見つめていること、それこそが愛情だからです。
おおよその日程、メニューは次のとおりですが、毎年、試行錯誤しながら変えています。 到着したらまず入村式を行い、虫や獣への対処の仕方などキャンプでの基本的なルールを学び、その後は山や川で遊びます。 翌日から授業。なぜ家が必要なのか、家がないとどうして困るのか、家で何をしたいか、どんな家が欲しいかなどについてみんなで考えます。 3日目は作りたいと思う家を言葉やスケッチで表し、そのイメージを模型にしてみます。 その模型を前に誰の案で家を作るかをみんなで相談します。小さなアイデアでもできるだけみんなの案が生かされるように工夫します。 4日目、地鎮祭を行い、いよいよ家の建設に入ります。 早ければ翌日、遅くても翌々日の6日目までに間伐材の骨組みを組み上げ、上棟式を行います。 残りの日数で床、壁、屋根を仕上げ、棚や家具など自分が作りたかったものを作ります。屋根ができた翌日から自分達が作った家で眠ります。 工事の進行状況や天気の様子などをうかがいながらその間に、川遊び、沢登り、昆虫採集、花火大会、釣堀による釣り、紙芝居や芝居鑑賞などを行います。 立山の雷鳥研究者、日本アルプスを撮りつづけているカメラマン、きのこの研究者などの専門家もときに参加し子どもたちに話をしてくれます。 最後の晩は竣工式です。みんなでケーキにろうそくを灯します。
主役の子どもたち :小学校4年生から中学校2年生までの男の子と女の子です。 総監督 :企画の発案者、企画の補助金申請者、ヒロプランニング社長、全国子ども会連合会の専門委員、私の高校(全寮制高校)の友人、料理番の井上弘氏(ニックネーム=シャチョー) 助監督 :『森の暮らしの里』のリーダー、サバイバルと山の遊びのプロ、体脂肪率ゼロの朝重孝治氏(ニックネーム=トモサン) 生活担当助手 :地元の若者、東京の社会人、学生、『森の暮らしの里』のスタッフなどでキャンプや子ども達の生活に明るい人たち 技術担当助手 :建築学科の学生たち、デザインや工事のサポート役 お母さん、お父さん :子供の様子を見に、あるいは自分でも何かを作りたくて(基本的には許可しませんが、あくまで主役は子供たちですから)訪れてくださったお母さんやお父さんが手伝ってくれます。 ゲストの方々 :スタッフの友人達が遊びに来て、結局手伝わされて帰ります。一泊食事、お酒付4000円です。 監督 :早川洋(ニックネーム=センニン)
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雪の下には春に備えて小さな草の芽が雪解けを待っていることでしょう。つぼみも眠っているかもしれません。 それらが芽を吹き、ぐんぐん成長し繁茂する、あとたったの4ヵ月半後に、今度は降るような蝉の声の中私は再びここを訪れ、子どもたちと再会することができます。 一年のブランクで子どもたちは心も身体も驚くほど成長します。そしてわずか10日間の家作りの生活の中でも、目を見張るほど変わる子もいるのです。 去年の夏何度も何度も世話になった和式トイレにも別れを告げ、私は横浜に帰りました。 今年の夏、皆さんもどうぞ参加してください。いつでも大歓迎です。炉辺で語り明かそうではありませんか。 それからお子さん、お孫さんで小学校4年生から中学校2年生の子がいらっしゃったら是非、この活動を教えてあげてください。 募集要綱は決まり次第このホームページとメールマガジンに掲載します。
■実施期間:平成17年8月18日(木)〜26(金)8泊9日 ■実施場所:長野県大町市平『森の暮らしの里』 ※自然に恵まれた森の中です。(敷地300ha) ■参加定員20名 ※応募多数の場合は抽選にさせていただきます。 ■参加対象者:小学4年生〜中学2年生までの男女 ■参加費:33,600円(食事代、材料費、建材費、保険代含む) ※自宅から現地までの交通費は自己負担になります。 ■一般参加:子ども達の活動を眺めるのも手伝うのも小屋で寝ているのも自由です。 ※一泊4,200円(3食お酒と楽しい会話付き) ■応募先:hykw4a@mail5.alpha-net.ne.jp 早川洋 |
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